【弁護士解説】IPO審査の最大の「地雷」は労務だ。上場を阻む「未払い残業」と「名ばかり管理職」のリアル

alt="記事「【弁護士解説】IPO審査の最大の「地雷」は労務だ。上場を阻む「未払い残業」と「名ばかり管理職」のリアル」のアイキャッチ画像。スーツを着た弁護士が「リーガルチェック」と書かれた書類を持ち、「上場」と書かれた門を指差しているイラスト。その手前では「労務」という巨大な地雷が爆発し、「未払い残業」「名ばかり管理職」と書かれた紙片が飛び散っており、労務問題が上場を阻む重大なリスクであることを表現している。" ベンチャー法務とは
弁護士町田北斗

ベンチャー起業の法務を専門とし、社内弁護士として企業の成長を法的側面から支えています。
当サイトでは、単なる事務処理ではない「経営に貢献できる法務」になるための実務ノウハウを公開。
契約書審査からIPO準備、労務戦略まで、現場で本当に役立つ「攻めと守りのリーガルビジネスマインド」をお伝えします。

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「ベンチャーなんだから、定時で帰るなんてありえないよね」
「タイムカード? 面倒だから適当に押しておいて」

創業期の熱量だけで走ってきた企業がいざIPOを目指す時、最初にぶつかる巨大な壁。
それが「労務コンプライアンス」**です。

労務管理がズサンな会社は、絶対に上場できません。
なぜなら、未払い残業代などの「隠れ債務」は、上場後に株主に対して巨額の損害を与えるリスクがあるからです。
✓未払い残業代があると過去3年分を支払う義務が発生。
✓全社員の過去3年分を一気に支払う必要があるため、キャッシュフローは極めて悪化。)

今回は、法務担当者が人事とタッグを組んで解決すべき、IPO労務の「3つの地雷」について解説します。


1. なぜ労務がIPOの「鬼門」なのか

契約書や登記の不備は、発見した時点で修正すれば「一件落着」となることが多いです。 しかし、労務問題は違います。

  • 過去に遡及する: 未払い残業代は、過去3年分まで遡って請求されます。社員50人の会社でも、計算し直すと数千万円〜億単位の支払いが発生し、一瞬で債務超過になることすらあります。キャッシュフローも著しく悪化させることになります。
  • 文化の否定: 「時間に縛られずに自由に働く」というベンチャー特有のカルチャーを、「法律通りの就業時間」形へ強制矯正するため、社内の反発が凄まじい。

法務担当者は、法律論だけでなく、この「社内風土の変革」という仕事に向き合う必要があります。

【表:未払い残業代の発覚により上場断念・延期となった実例パターン】

失敗ケース(業種)違反の内容(トリガー)経営・財務へのインパクト(結末)
ケースA:ITベンチャー
(固定残業代の不備)
「月45時間分のみなし残業代」を含んだ給与設定にしていたが、就業規則への記載不備基本給との区分が曖昧だったため、「全額が基本給」と認定された。過去2年分(当時)の残業代を再計算した結果、数億円規模の未払い賃金が発覚。利益が吹き飛び、債務超過に転落したため上場申請を取り下げた。
ケースB:外食・小売
(名ばかり管理職)
店長を「管理監督者」として扱い、残業代を支払っていなかった。しかし、実態は**「出退勤の自由がない」「権限がない」**として、労働者性が認められた。数百人の店長クラスに対し、過去に遡って残業代を一括支給することになり、キャッシュフローが破綻。監査法人から「継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)」に疑義がついた。
ケースC:運送・物流
(労働時間の過少申告)
タイムカード打刻前の「朝礼・掃除・着替え」や、終了後の「日報作成」を労働時間としてカウントせず、黙示の指示でサービス残業させていた。労基署の是正勧告を機に、主幹事証券会社から**「コンプライアンス体制(労務管理)の欠如」**を指摘され、審査ストップ。体制再構築に3年を要することになり、上場を無期延期。

2. 審査で狙い撃ちされる「3つの地雷」

証券会社や労基署が目を光らせるポイントは決まっています。以下の3つがクリアできていなければ、上場申請は困難といえるでしょう。

「うちは月45時間のみなし残業代を入れているから、残業代計算は不要」と思い込んでいる企業が非常に多いです。
しかし、以下のような運用だと制度自体が無効と判断され、払った手当は「ただの基本給」とみなされ、さらに上乗せで残業代を払わされることになります。

  • 基本給と固定残業代の区分が雇用契約書で明確でない。
  • 45時間を超えた分の差額を支払っていない。
  • 賞与の計算基礎から除外していない。

「固定で払っているから、計算しなくていい」という考えは間違いです。

裁判所は「それが本当に残業代としての実体を持っているか(明確区分性・対価性)」を厳しく審査します。ここが否定されると、「過去に払った手当はすべて基本給として扱われ、別途支払いが必要」となります。

運用の実態(NG例)裁判所の判断・ロジック(なぜ無効になるのか)企業が被る経済的ダメージ(ダブルパンチ)
区分が不明確
「月給30万円(残業代含む)」
とだけ記載し、何時間分でいくらなのか内訳が不明。
【明確区分性の欠如】
「基本給」と「残業代」の境目が分かりません。よって、**「全額(30万円)が基本給である」と認定されます。
【基礎単価の急騰】
本来の基本給より高い金額(30万円)をベースに、過去2〜3年分の残業代をイチから再計算して支払い直し**になります。
差額を払っていない
「45時間を超えても追加支給なし」
あるいは「うちは営業手当で一律5万円だから、何時間働いても5万円」という運用。
【清算の欠如】
固定残業代はあくまで「前払い」です。実労働時間が設定時間(45時間)を超えたなら、その**「超過分(差額)」**を払わないのは違法です。
【未払い賃金請求】
「45時間を超えた部分はタダ働き」させていたことになり、遅延損害金を含めて請求されます。
実態と乖離している
「月80時間分の固定残業代」
を設定しているが、実際は月10時間しか残業していない。
【公序良俗違反】
「80時間」という過労死ラインギリギリの設定は、残業代支払いを免れるための脱法行為とみなされ、制度自体が無効になるリスクがあります。
【制度の全否定】
固定残業代制度そのものが無効となり、NG例1と同じく「全額基本給」扱い+全額支払い直しになります。
勤怠管理をしていない
「みなしだからタイムカード不要」
として、日々の始業・終業時刻を記録していない。
【労働時間把握義務違反】
労働時間を把握していなければ、「45時間を超えたかどうか」の判定もできません。
【社員のメモが証拠に】
裁判では、社員がつけていた個人的な日記やGoogleマップの履歴が「正」とされ、会社側の反論が封じられます。

恐怖の「ダブルパンチ」とは?

固定残業代が無効になると、会社は以下の2つのダメージを同時に受けます。これが「倍返し」の仕組みです。

  • 会社の認識: 会社は「基本給22万円+固定残業代8万円=30万円」のつもりだった。
  • 判決: 「区分が曖昧なので、30万円すべてが基本給です」。
  1. 払ったはずの8万円が消える
    • 8万円は「残業代」として認められず、ただの「高い基本給」の一部になります。つまり、残業代は1円も払っていなかったことになります。
  2. 残業単価が跳ね上がる
    • 残業代の単価(時給換算)は、「22万円」ではなく**「30万円」をベースに計算**されます。
    • 結果、過去に遡って、高い単価で再計算した残業代を**全額(数百万円)**支払うことになります。

法務のTodo:

今すぐ雇用契約書を確認してください。

  • 「基本給〇〇円、固定残業手当〇〇円(〇〇時間相当分)」と金額と時間が明記されていますか?
  • 「超過分は別途支給する」という但し書きが入っていますか?
  • 給与明細で、その金額が別項目になっていますか?

【実践シミュレーション】有効 vs 無効(ダブルパンチ)

具体例

  • 月額給与: 30万円
    • (会社側の想定内訳:基本給22万円 + 固定残業代8万円)
  • 固定残業の設定: 45時間分として8万円を支給
  • 実際の残業時間: 60時間(45時間を超えている)
  • 所定労働時間: 月160時間
〇 パターンA:制度が「有効」な場合(適正な運用)

雇用契約書で区分が明確で、就業規則にも明記されている場合です。

  1. 時給単価(基礎賃金)の算出固定残業代(8万円)を除いた「基本給」をベースにします。
    220,000円÷ 160時間 = 1,375円
  2. 本来の残業代総額の算出単価に割増率(1.25倍)を掛け、実際の残業時間(60時間)を掛けます。
    1,375円 × 1.25 ×60時間 = 103,125円
  3. 差額(未払い分)の算出本来の総額から、既に払っている固定残業代を引きます。
    103,125円 – 80,000円 = 23,125円

結論: 会社は23,125円(月額)を追加で支払えばOKです。


× パターンB:制度が「無効」な場合(ザル運用)

契約書で区分が不明確だったり、実態と乖離していて制度が無効と判断された場合です。これが恐怖のダブルパンチです。

  1. 時給単価(基礎賃金)の算出固定残業代(8万円)が「ただの基本給」とみなされるため、分母(給与総額)が増えます。
    300,000円 ÷160時間 = 1,875円(※単価が約1.36倍に跳ね上がりました)
  2. 本来の残業代総額を高くなった単価で計算します。
    1,875円 × 1.25 × 60時間 = 140,625円
  3. 差額(未払い分)の算出ここが最悪のポイントです。8万円は「基本給」になってしまったので、残業代から差し引くことができません。
    140,625円 – 0円 = 140,625円

結論: 会社は140,625円(月額)を支払わなければなりません。
       140,625円×36カ月=???


計算時の注意点(よくある見落とし)

計算を行う際、以下の要素も考慮する必要があります。

項目注意点・計算ルール
深夜労働
(22時〜翌5時)
固定残業代に「深夜割増」が含まれているか確認が必要です。含まれていない場合、別途0.25倍の上乗せ支払いが必須です。
休日労働
(法定休日)
法定休日(週1回の休み)に働いた場合は、1.35倍で計算します。固定残業代の対象が「時間外労働」のみの場合、休日労働分は全額別枠で支払う必要があります。
欠勤・遅刻「今月は欠勤があったから残業代と相殺する」という運用は原則NGです(全額払いの原則)。固定残業代は定額で払い、欠勤控除は別途行うのが安全です。

法務のTodo:

自社の給与明細と就業規則を照らし合わせ、「パターンA」の計算式が成り立つか確認してください。もし「パターンB」になりそうなら、即座に雇用契約書の巻き直し(改定)が必要です。

労働基準法上の「管理監督者」になれば、残業代を支払う必要はありません。これを悪用し、課長や部長の肩書きを与えて残業代をカットしているケースです。

しかし、審査上の「管理監督者」のハードルは極めて高いです。

  • 経営者と一体的な立場か?
  • 出退勤の自由はあるか?
  • ふさわしい待遇(給与)を得ているか?

「部長だけどタイムカードを押している」「給与が平社員と大差ない」といった場合、それはただの社員です。過去の残業代をすべて計算し直す必要があります。

「部長なら残業代ゼロ」は大間違い! 管理監督者の3大要件チェック

「自分の時間は自分で決める」「経営に参加している」「十分な高給をもらっている」。

この3つがすべて揃っていない限り、その人は法律上「ただの平社員(残業代支払い対象)」です。

判定基準(3つのハードル)① 名ばかり管理職(NG例)【残業代支払い義務あり】② 真の管理監督者(OK例)【残業代対象外】裁判所・労基署の視点(ここを見ています)
1. 職務内容と権限
(経営者との一体性)
「権限なき店長・課長」
アルバイトの採用権限もなければ、予算決定権もない。上層部の決定を部下に伝えるだけの「連絡係」になっている。
「経営判断への参画」
経営会議に出席し、部門の予算や人事採用について決定権を持っている。自らの裁量でビジネスを動かしている。
【ただの現場リーダーではないか?】
部下の労務管理やシフト作成をしている程度では管理監督者とは認められません。
2. 勤務態様の自由
(時間の裁量権)
「遅刻したら怒られる」
始業・終業時刻が厳格に管理されており、遅刻すれば給与が引かれる。シフトに穴が開けば自分が埋めなければならない。
「出退勤は自由」
何時に来て何時に帰るかは本人の裁量に任されている。遅刻・早退による給与控除(減額)が一切ない。
【タイムカードの意味】
健康管理のための打刻はOKですが、「遅刻=減給」という運用があれば、その瞬間に管理監督者性が否定されます。
3. 賃金等の待遇
(ふさわしい地位)
「部下より手取りが低い」
役職手当(例:3万円)はあるが、残業代がつかないため、残業しまくる平社員の方が給料が高くなる逆転現象が起きている。
「基本給からして別格」
残業代が出なくても十分なほど高い基本給や役職手当が設定されており、誰が見ても「厚遇」されている。
【深夜手当の有無】
管理監督者であっても、**「深夜割増(22時以降)」**は支払う義務があります。これを払っていない企業は論外です。

有名な判例:「日本マクドナルド事件(東京地裁 H20.1.28)」

「店長」という肩書きがあっても、アルバイトの募集権限や独自の経費権限がなく、本社マニュアルに従うだけの存在であれば、管理監督者には当たらないと断罪された有名な事件です。

この判決以降、多くのチェーン店や企業で「名ばかり管理職」への残業代支払いが命じられました。

リスクの爆発:過去3年分の「遡及支払い」

もし税務調査や労基署の臨検で「この部長たちは管理監督者ではない」と認定されると、以下のペナルティが発生します。

  1. 管理職手当は「ただの基本給」の一部とみなされる。
  2. その高い基本給をベースに、過去3年分の残業代を再計算する。
  3. 対象者が複数いれば、未払い額は億単位になることもある。

法務のTodo:

「課長以上は残業代なし」という一律ルールを廃止し、**「権限と給与が見合っていない課長」を一般社員に戻す(残業代を払う運用にする)**ことが、最も安全な解決策です。

「自己申告」の勤怠表は、審査では信用されません。 **「PCのログ(オン/オフ時刻)」「入退室カードの記録」**と、申告した勤怠時刻に乖離(ズレ)がないかを全社員分チェックされます。

「PCログは22時なのに、勤怠は19時で退社になっている。この3時間の乖離理由は?」 この質問に一件一件、合理的な説明ができなければ、それは「サービス残業(違法)」と認定されます。

IPO審査や労基署の調査において、タイムカード(自己申告)は「性善説」で書かれたものとして信用されません。彼らが信用するのは**「性悪説」で記録されたPCログ(客観記録)**だけです。


「自己申告」vs「PCログ」 恐怖の乖離(かいり)チェックリスト

「なぜPCは動いているのに、退勤したことになっているのか?」

この問いに対し、合理的かつ具体的な証拠(乖離理由書)が出せなければ、その時間はすべて**「隠れ残業(未払い賃金)」**とみなされ、強制的に支払わされます。

乖離(ズレ)の状況① 監査で「アウト」になる回答(サービス残業認定 ⇒ 支払い命令)② 監査で「セーフ」になる回答(労働時間ではないと証明)必要な証拠・運用(言い訳を事実に変えるもの)
夜間の乖離
申告:18:00 退社
PCログ:21:00 稼働
「帰る前にネットニュースを見ていました」
「シャットダウンを忘れました」
※単なる言い訳や、頻繁に発生している場合は「黙示の残業命令」があったとみなされます。
「自己研鑽(資格勉強)のため、上司の許可を得て会議室を使用していました」
※業務と無関係な活動をしていたことが明確。
【乖離理由書】
翌朝に「昨夜はPCを切り忘れましたが、業務はしていません」という申告を申請し、上司が承認した記録。
早朝の乖離
入館:07:30 入室
申告:09:00 始業
「早く着いたので、メールチェックをしていました」
※少しでも業務(メール閲覧含む)をしていれば、それは労働時間です。
「朝活(読書)のためカフェスペースを利用していました。PCは起動していません」
※PCログがなく、入退室記録のみの場合に有効。
【早朝勤務禁止の通達】
「始業30分前以前のPC操作は原則禁止」というルールを周知し、ログがないことを確認する。
休憩中の乖離
申告:1時間 休憩
PCログ:ずっと稼働
「ランチしながら仕事してました」
※いわゆる「ながら休憩」。電話番をさせていたり、PCを操作できる状態なら休憩とは認められません。
「PCで動画を見ていましたが、業務からは完全に離れていました(自由利用)」
※電話対応義務などがなく、完全に自由であったならOK。
【一斉休憩の徹底】
または、休憩中はPCをスリープにする習慣づけ。ログが連続していると「休憩なし」と判定されるリスク大。
休日の乖離
申告:休日(出勤なし)
VPN:ログイン履歴あり
「気になって家でメールを見ました」
※持ち帰り残業の典型。数分のアクセスでも、積み重なれば未払い賃金です。
「緊急のシステムアラート対応で5分だけログインしましたが、その分は振替申請済です」
※働いた事実を認め、正しく処理していれば問題なし。
【アクセス制限】
休日や深夜はサーバーへのアクセス権限を自動で遮断し、物理的に働けない環境を作る。

法務の防衛策:「乖離理由書(かいりりゆうしょ)」の運用

IPO準備企業では、以下のような厳しい運用が標準(スタンダード)です。

  1. 日次チェック:勤怠システムとPCログを毎日自動突合し、**「15分以上のズレ」**がある社員をアラートで抽出する。
  2. 理由の入力:アラートが出た社員は、翌朝までに**「乖離理由(なぜズレたか)」**を入力しないと、勤怠が確定できない(給与計算に回せない)仕組みにする。
  3. 上長の承認:上司は「確かに昨日は残って雑談していた(仕事はしていない)」と確認した上で承認する。

監査人の視点:

人間なので、PCの切り忘れは必ず発生します。

重要なのは、ズレがないことではなく、**「ズレた時に、その理由を都度確認し、記録に残しているか(放置していないか)」**という管理体制です。


3. 法務は「嫌われ役」を買って出ろ

労務管理の適正化(ホワイト化)を進めると、古参社員や営業部門から必ず不満が出ます。 「管理ばかり厳しくなって、仕事がしにくい」 「法務がブレーキをかけるせいで、売上が落ちた」

しかし、ここで折れてはいけません。 法務担当者のミッションは、現場のご機嫌を取ることではなく、**「会社を適法な状態にして、市場(マーケット)という公の場に出すこと」**です。

「今は辛いかもしれませんが、これを乗り越えないと、みんなが持っているストックオプションも紙切れになります」 そう伝え続け、経営陣を巻き込んで改革を断行する。その強さこそが、IPO法務に求められる資質です。

【表:IPO法務が直面する「社内の壁」と、突破するための「正義」】

抵抗勢力(誰が)現場からの不満・批判(短期視点)法務が貫くべきミッション・説得ロジック(長期視点)
営業部門
(トップセールス等)
「細かい与信審査のせいで失注した」
「法務がブレーキをかけるから売上が落ちる」
【ブレーキがあるから、アクセルが踏める】
違法な売上は、上場審査では「不正」と見なされ、上場廃止のリスクすら招く。「安全な売上」だけが、会社の評価額を高める。
古参社員
(創業メンバー等)
「昔はこんな細かいルールはなかった」
「管理ばかり厳しくなって、ベンチャーらしさが消えた」
【パブリック・カンパニーへの脱皮】
上場するということは、社会の公器になること。「仲良しクラブ」のルールでは、市場(投資家)からの資金は預かれない。
全従業員
(感情的な反発)
「法務は融通が利かない」
「現場の苦労をわかっていない」
【ストックオプションを紙切れにしない】
ここで適法化(ホワイト化)から逃げれば、上場は承認されない。全員が持っている夢(キャピタルゲイン)を実現するために、今は泥をかぶってでも改革を断行する。

4. まとめ:労務を制する者は、組織を制する

IPO準備における労務対応は、まさに「膿(うみ)」を出し切る作業です。 痛みを伴いますが、これを乗り越えた時、会社は「仲良しサークル」から、社会的に信頼される「パブリック・カンパニー」へと生まれ変わります。

この激動のプロセスを経験した法務人材は、「リスク管理」と「組織開発」の両方ができる希少なプロフェッショナルとして、間違いなくキャリアの市場価値が跳ね上がります。

もしあなたが、「大変そうだけど、会社が変わる瞬間に立ち会いたい」と思うなら、IPO準備中の企業の門を叩いてみてください。そこには、弁護士資格や法律知識だけでは得られない、濃密なドラマが待っています。

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