「それは法律的にリスクがあるので、できません」
もしあなたが、社長からの相談にこう答えているとしたら、ベンチャー企業では「使いづらい法務」の烙印を押されてしまうかもしれません。
大企業や中堅企業での法務は、確立されたブランドを守る「ブレーキ役」が主務でした。
しかし、成長フェーズにあるベンチャーや中小企業では、それだけでは会社は前に進めません。
経営者が求めているのは、**「死なない程度にリスクを取り、最速でゴールに向かうためのパートナー」**です。
法務担当者は、経営陣のビジョンをリスクの少ない形で実現することが使命です。
今回は、経営者から信頼される法務担当者が無意識に行っている「アクセル」と「ブレーキ」の高度な使い分けについて解説します。
1. 勘違いしていませんか?ベンチャー法務の「アクセル」とは

多くの人が「法務=守り(ブレーキ)」と考えがちですが、ベンチャーにおける法務の価値の半分以上は「攻め(アクセル)」にあります。
① 「ダメです」を「こうすればできます」に変換する
ベンチャーの新規事業は、法規制のグレーゾーンにあることが多々あります。
ここで「違法です」と思考停止するのではなく、「現行法に抵触しないスキーム(仕組み)」を構築することこそが、最大のアクセルです。
法務の役割は、リスクをゼロにすることではなく、**「リスクを許容可能なレベルまで下げて、ビジネスを通すこと(リーガル・エンジニアリング)」**です。
「違法」を「適法」に変えるスキーム構築力(リーガル・エンジニアリング)
ベンチャーの新規事業は、既存の法律が想定していない「隙間」を突くものが少なくありません。
ここで条文通りのNGを出すのは誰でもできます。プロの法務は、**「商流(お金と契約の流れ)」や「利用規約の定義」**を少しずらすことで、黒を白に変えます。
| 事業モデル・相談内容 | ① 思考停止の「ダメです」(事業を殺す法務) | ② 提案型の「こうすればできます」(事業を加速させる法務) | 使ったロジック・法的テクニック(リーガル・スキーム) |
| C2Cマッチング (家事代行や家庭教師のマッチングサイトを作りたい) | 「職業安定法や派遣法に触れるので無理です」 ※会社が人を派遣すると、許認可がない限り違法派遣になります。 | 「当社は雇用せず、ユーザー同士の『直接契約』の場を提供するプラットフォームにしましょう」 ※利用規約で、当社はあくまで「場所貸し」であり、契約当事者にならないことを明記します。 | 【当事者の変更】 「雇用関係」を回避し、「業務委託の仲介」または「情報の掲載」という位置付けにスライドさせ、法規制をクリアします。 |
| ヘルスケアアプリ (チャットで医師が症状を聞いてアドバイスしたい) | 「医師法(無診察治療の禁止)違反になるので無理です」 ※対面なしでの診断は、原則としてリスクが高いです。 | 「『診断』ではなく『医療相談(アドバイス)』という建付けにしましょう」 ※「病名の特定」や「薬の処方」はせず、あくまで一般的な医学情報の提供に留める仕様に変更します。 | 【定義の再構築】 医療行為(診断)と、非医療行為(相談)の境界線をガイドラインに基づき設定し、アプリのUIにも「診断ではありません」と免責を表示させます。 |
| 送金・決済機能 (ユーザー間で投げ銭や割り勘をさせたい) | 「資金決済法(資金移動業)の免許がないので無理です」 ※預かり金の移動は、銀行か登録業者しかできません。 | 「現金ではなく『ポイント』を発行し、出金不可・6ヶ月期限付きにしましょう」 ※または、収納代行スキーム(債権譲渡)を使って、法的に「送金」に当たらない形を組みます。 | 【商流の変更】 「現金」を動かすと重い規制がかかりますが、「ポイント」や「前払式支払手段」に切り替えることで、登録のハードルを劇的に下げます。 |
| スクレイピング (他社サイトの情報を集めて分析・提供したい) | 「著作権法違反や規約違反になるので辞めましょう」 ※他人のデータを勝手に使うのはリスクがあります。 | 「『情報解析用』としての利用なら、著作権法で認められています(47条の5)」 ※ただし、相手サーバーに負荷をかけないクロール頻度に制限し、元データをそのまま表示しない仕様にします。 | 【例外規定の活用】 「原則NG」の法律の中に隠れている「例外OK(情報解析など)」の条文を見つけ出し、その要件に合致するようにシステム仕様を調整します。 |
法務担当者のマインドセット:「法の支配」ではなく「法の活用」
この変換を行うために必要なのは、六法全書の知識ではなく、**「ビジネスモデルの解像度」**です。
- 「なぜこの事業をやりたいのか?」
- 「ユーザーにとっての価値は何か?」
これらを理解していれば、「診断ができなくても、相談ができるだけでユーザーは安心するのではないか?」といった代替案(ピボット)が提案できます。
**「法規制という壁に、ドアを描く」**のが、ベンチャー法務の真髄です。
② 契約書を「営業ツール」に変える
契約書を単なる「リスクヘッジの書類」と捉えていませんか?
優れた法務は、契約書を**「自社の利益を最大化し、かつ相手も納得させる武器」**として設計します。
知財の帰属や支払条件など、ビジネスの勝敗を決めるポイントを有利に運ぶ交渉力は、強力なアクセルとなります。
契約書は、締結した瞬間がゴールではありません。締結した後、ビジネスがどれだけスムーズに、かつ高収益に回るかを決定づける「設計図」です。
「守り」の書類を「攻め」の武器へ。契約書の戦略的転換
法務がビジネスセンスを発揮すると、契約書は「面倒な手続き」から**「キャッシュフロー改善ツール」や「資産形成ツール」**へと進化します。
| 契約条項・テーマ | ① 普通の契約書(ただのリスクヘッジ・受動的) | ② 営業ツールとしての契約書(利益最大化・能動的) | ビジネスへのインパクト(なぜそれが武器になるか) |
| 知的財産権 (成果物の帰属) | 「納品物の著作権は、すべて顧客に譲渡する」 ※言われるがままに権利を渡し、自社には何も残らない(ただの下請け)。 | 「汎用的なプログラム(エンジン部分)の権利は自社に留保し、顧客には『使用権』を許諾する」 ※顧客専用のデザインなどは渡すが、コア技術は渡さない。 | 【スケーラビリティの確保】 コア技術を自社に残すことで、他社案件でも同じコードを使い回せるようになり、開発原価が劇的に下がります(SaaS化への布石)。 |
| 支払条件 (キャッシュフロー) | 「月末締め翌月末払い(後払い)」 ※商慣習通りにするだけ。資金繰りが苦しくなる。 | 「年間契約の一括払いなら、総額から5%ディスカウント」 ※契約書のオプションとして「松(一括)」と「竹(月額)」を用意する。 | 【資金調達コストの削減】 借入をするよりも、値引きで現金を先取りした方が、キャッシュフロー(CF)は良くなります。契約書で「お得感」を出しつつCFを改善します。 |
| データ利用権 (AI・分析) | 「契約終了後、データはすべて速やかに廃棄する」 ※秘密保持を重視するあまり、データという資産を捨てる。 | 「顧客データは、個人を特定できない統計データに加工した上で、サービスの品質向上(AI学習)に利用できる」 ※データの「二次利用権」を確保する。 | 【プロダクトの進化】 顧客が増えるほどAIが賢くなり、競合他社が追いつけない「データ優位性(Data Moat)」が構築されます。 |
| 仕様変更 (追加開発) | 「仕様変更は別途協議する」 ※曖昧にしておき、後で「これもやって」と言われた時に断れず、タダ働きが発生する。 | 「当初仕様以外の作業は、一律『人月単価〇万円』で精算する」 ※追加オーダーの「単価表」を最初から契約書に埋め込んでおく。 | 【アップセルの自動化】 「追加はお金がかかります」といちいち交渉しなくても、契約書を見せるだけで自動的に追加売上が確定します。 |
「相手も納得させる」ロジックの組み立て方
重要なのは、一方的に有利な条件を押し付けるのではなく、**「相手にとってもメリットがある」**ように見せることです。
法務担当者は、営業マンに対し、この**「契約交渉トークスクリプト」**までセットで渡すことで、最強の営業支援を行うことができます。
2. 本当に踏むべき「ブレーキ」の見極め方

もちろん、アクセル全開で崖から落ちては意味がありません。しかし、ベンチャーにおけるブレーキは「急停止」ではなく、「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」のように、動きながら制御するものであるべきです。
ブレーキその① 「100点のリスク管理」を捨てる勇気
大企業では「リスクゼロ」を目指しますが、ベンチャーでそれをやるとスピードが死にます。
- 取るべきリスク(ビジネスリスク): 損害賠償の上限額、軽微なコンプライアンス不備など、「最悪お金で解決できる、あるいは修正可能なもの」。
- 絶対に踏むべきブレーキ(フェイタルリスク): 許認可の取り消し、刑事罰、回復不能なレピュテーションリスク(炎上)、倒産に直結する条項。
この**「致命傷」だけは断固として防ぎ、それ以外の「擦り傷」は許容する**という線引きの感覚が重要です。
スタートアップにおいて、全てのリスクを塞ごうとすることは、**「何もしないこと(死)」**と同義です。法務の役割は、アクセルを全開にするために、本当に危険な崖だけをガードレールで塞ぐことです。
「カスり傷」は恐れるな。「即死」だけを回避せよ
法務担当者が経営陣と確認するのは、**「どこまでなら怪我をしていいか(リスク許容度)」**のコンセンサスを得ることです。
「最悪、お金で解決できるか?」「謝れば許してもらえるか?」という基準で選別します。
| リスクのカテゴリ | ① 取るべきリスク(Business Risk)【判断:GO / お金で解決可能】 | ② 絶対に踏むべきブレーキ(Fatal Risk)【判断:STOP / 即死・倒産】 | 境界線の見極め方(法務の判断基準) |
| 契約・損害賠償 (対 顧客・取引先) | 「賠償額の上限がない」 ※ただし、過去の実績から見て損害発生確率が極めて低く、かつ会社の現預金で払える範囲(数百万〜数千万円)と予測される場合。 | 「自社の存続を揺るがす無制限賠償」 ※ユーザー数×数万円のような、計算すると数十億円になり得る条項。または「連帯保証人(社長個人)」を求められる契約。 | 【B/S(貸借対照表)への影響】 その損害が現実になった時、会社が破産するか、それとも「痛い出費」で済むか。 |
| 法規制・コンプライアンス (対 行政・警察) | 「グレーゾーンへの進出」 ※業法(医師法、旅行業法など)の適用が曖昧だが、事前に省庁へ照会(ノーアクションレター)を行うか、ビジネスモデルを修正すれば回避可能なレベル。 | 「刑事罰・許認可取消」 ※経営者が逮捕される(詐欺、横領、出資法違反)、または事業に必要な免許(金商法など)が一発で取り消される行為。 | 【リカバリーの可能性】 「指導・改善命令」で済むなら攻める。「営業停止・逮捕」なら絶対に止める。 |
| 知的財産・権利 (対 競合・第三者) | 「他社の商標と少し似ている」 ※最悪、警告を受けたらサービス名を変更(リブランディング)すれば事業継続が可能。 | 「コア技術の権利侵害・流出」 ※自社のメインプロダクトが他社の特許を完全に踏んでいる(差止請求でサービス停止)、または自社のソースコード権利を開発会社に取られている。 | 【代替手段の有無】 名前やデザインは変えられるが、技術の根幹や事業の土台を失えばゲームオーバー。 |
| レピュテーション (対 世間・SNS) | 「一部ユーザーからのクレーム」 ※UI変更や値上げに対する批判など、コアファン以外からのノイズ。誠実に対応すれば鎮火可能。 | 「社会的信用の完全失墜」 ※個人情報の大量漏洩(隠蔽)、反社会的勢力との関わり、ハラスメントの常態化など、ブランドが再起不能になる大炎上。 | 【信頼の回復不能】 「失敗した会社」は許されるが、「嘘をついた会社」「悪意のある会社」は市場から抹殺されます。 |
法務の心得:「トリアージ(優先順位付け)」
病院の救急救命室と同じです。
全ての患者(契約書の修正点)を助ける時間はありません。
- 黒タグ(即死): 倒産、逮捕、事業停止。 ⇒ 全力で回避。
- 赤タグ(重症): 数千万円の損失、主要顧客の喪失。 ⇒ リスク低減案を出して交渉する。
- 黄・緑タグ(軽症): 数十万円のリスク、軽微な規約違反。 ⇒ 「リスクあり」と伝えた上で、経営判断で通す(目をつぶる)。
ベンチャー法務において、「100点満点の契約書」を目指すことは、「チャンス損失」という最大のリスクを犯していると自覚すべきです。
ブレーキその② 社長の「熱」を冷まさずに、諭す技術
イケイケドンドンの社長に冷や水を浴びせるのは逆効果です。 「社長のやりたいことは素晴らしいです(共感)。ただ、今のままだと社長が逮捕されてしまうリスクがあります(事実)。だから、この部分だけ修正させてください(提案)」 このように、**「あなたのビジョンを実現するために、私がリスクを取り除く」**というスタンスでブレーキを踏むことが信頼に繋がります。
経営者は「できない理由」を知りたいのではありません。**「どうやったら実現できるか」を知りたいのです。法務は「No」と言う仕事ではなく、「はい、ただしこの方法で」**と言う仕事です。
「No」と言わない法務。社長のメンツを潰さずリスクを潰す会話術
法務にとって最大の敵は、社長に「あいつに相談するとまた止められるから、内緒で進めよう」と思われることです。
相談のドアを開け続けてもらうためには、**「ビジョンへの共感(YES)」から入り、「致命傷の回避(BUT)」を伝え、「抜け道(IF)」**を提示するサンドイッチ話法が必須です。
| 場面・社長の暴走 | ① ダメな法務の「正論パンチ」(社長のやる気を削ぐ・相談されなくなる) | ② 信頼される法務の「Yes, But提案」(ビジョンを守り、リスクを消す) | 提案のロジック(心理的アプローチ) |
| 広告・PR 「世界初!No.1!って大々的に出そうぜ!」 (根拠が薄い誇大広告) | 「景表法違反になるのでダメです。根拠データがないと嘘になります」 ※「嘘つき」と言われたようで社長は不機嫌に。「細かいこと言うなよ」と反発される。 | 「インパクト最高ですね(共感)。ただ、他社から刺されて広告停止になるともったいないです(リスク)。『○○調べ』と注釈を入れるか、範囲を『国内』に限定すれば、即リリース可能です(提案)」 | 【表現のチューニング】 「言うな」ではなく「言い方をこう変えれば言える」と修正案を出し、広告効果を維持させます。 |
| 新規事業 「この機能、ライバルより先に明日リリースだ!」 (利用規約や許認可が未整備) | 「規約もできてないし、業法違反のリスクがあるので承認できません」 ※スピード感のない抵抗勢力とみなされ、「お前は評論家か」と怒られる。 | 「この機能は市場を変えますね(共感)。ただ、今のままだと最悪サービス停止命令が出ます(リスク)。まずは『β版』として人数限定でリリースし、その間に許認可をクリアするのはどうですか?(提案)」 | 【段階的リリースの提案】 「止める」のではなく「走りながら整備する」プランを提示し、スピードと安全性を両立させます。 |
| 労務管理 「今月は勝負だ!全員不眠不休でやれ!」 (36協定無視の長時間労働) | 「労基法違反です。ブラック企業になりますよ。残業代も払えません」 ※「俺たちの情熱を法律で測るな」と精神論で返される。 | 「チームの士気が高いのは素晴らしいです(共感)。ただ、倒れて労基署に入られるとプロジェクト自体が止まります(リスク)。深夜残業は禁止にして、代わりに『早朝手当』と『達成ボーナス』を出して効率を上げませんか?(提案)」 | 【インセンティブへの変換】 「働かせるな」ではなく「効率よく働かせる」方向に誘導し、結果としてコンプライアンスを守ります。 |
| 契約交渉 「大手との契約だ!条件なんていいからハンコ押せ!」 (不利な条件での契約締結) | 「損害賠償が無制限になっているので、修正しないと危険です」 ※「お前がビビってるせいで破談になったらどうするんだ」と詰められる。 | 「この大手と組めるのはデカイですね(共感)。ただ、向こうのミスでも社長が借金を背負う条項になっています(リスク)。『賠償額の上限』だけ設定できれば、あとは社長の判断でGOして大丈夫です(提案)」 | 【一点突破の交渉】 10個の修正点を出すのではなく、「ここだけ直せば死なない」という一点に絞って提案し、社長の負担を減らします。 |
法務のキラーフレーズ:「社長を守るために」
この「諭す技術」の根底にあるのは、**「私はあなたの敵(ブレーキ)ではなく、あなたのガードマン(盾)だ」**というメッセージです。
最後に、どうしても社長がリスクを無視して突き進もうとした時の**「最後の殺し文句」**を紹介します。
「社長、分かりました。社長がそこまで言うなら、私は止めません。
ですが、もし何かあった時、会社を守れないのが一番怖いんです。
だから、この『免責条項』一本だけは、入れさせてください」
ここまで言われて、「それでもいいから突っ込め」と言う経営者は稀です。
「愛あるブレーキ」こそが、ベンチャー法務の真骨頂です。
3. 「管理部門」から「経営パートナー」への進化

アクセルとブレーキを適切に使い分けることができれば、あなたは単なる「法務担当者」から、社長にとってなくてはならない「右腕(パートナー)」へと進化します。
孤独な経営者にとって、**「法律という客観的な物差しを持ちながら、ビジネスの成功を本気で考えてくれる存在」**は、何物にも代えがたい安心材料です。
- 事業の相談が、企画段階から来るようになる。
- 経営会議で「法務的にはどう思う?」と最初に意見を求められるようになる。
- 会社の成長と自分の成長がリンクする実感を味わえる。
これこそが、ベンチャー法務の醍醐味です。
脱・事務屋。「代わりの利かない右腕」になるための進化論
法務担当者のキャリアには、明確な「壁」があります。
一つは**「法律知識の壁」。もう一つは「経営視点の壁」**です。
後者を乗り越えた時、あなたは「コストセンター(管理部門)」から、利益を生み出す「プロフィットセンター(経営参謀)」へと変貌します。
| 業務・シーン | ① 従来の「管理部門」法務(ブレーキ役・事後処理) | ② 進化した「経営パートナー」法務(アクセル役・事前設計) | 経営者からの評価・信頼度(なぜ重宝されるのか) |
| 相談が来るタイミング (関与の深さ) | 「決まったから、契約書チェックして」 ※企画が固まり、後戻りできない最終段階で初めて知らされる(聖域なきチェックができない)。 | 「今度こういうことやりたいんだけど、どう思う?」 ※ホワイトボードにアイデアを書く「企画の初日」に呼ばれ、法的スキームそのものを一緒に設計する。 | 【手戻りの撲滅】 「最後に法務にひっくり返される」というストレスがなくなり、最短ルートでリリースまで走れるようになります。 |
| 会議での発言 (バリューの出し方) | 「法的には問題ありません(沈黙)」 ※コンプライアンス違反がないかだけを監視し、ビジネスの中身には口を出さない。 | 「法的にはクリアですが、その条件だと将来のM&Aで足枷になります。ここは権利を確保しておきましょう」 ※法律を武器に、ビジネスの「将来価値」を上げる提案をする。 | 【視野の広さ】 目の前の契約だけでなく、数年後のExit(上場・売却)まで見据えたリスク管理ができる存在として頼られます。 |
| トラブル対応 (危機管理) | 「規則違反なので、現場の責任です」 ※正論で現場を断罪し、自分(会社)の責任回避を優先する。 | 「現場の火消しは私に任せてください。社長は銀行への説明をお願いします」 ※泥をかぶる覚悟を示し、社長が「前を向くための時間」を稼ぐ。 | 【心理的安全性】 「背中は任せた」と言える存在がいることで、経営者は安心してアクセルを全開に踏めます。 |
| 情報のインプット (学習の対象) | 「最新の法令・判例チェック」 ※法務知識のアップデートに終始し、自社の業界動向には疎い。 | 「自社の業界動向・競合の決算書」 ※「競合A社が特許を出願したから、うちはこの領域を攻めよう」と、ビジネスと知財をリンクさせて考える。 | 【共通言語での会話】 「法律用語」ではなく「ビジネス用語(数字・市場)」で会話ができるため、経営判断のスピードが落ちません。 |
「パートナー」に昇格した証(サイン)
あなたがこの領域に達した時、社内では以下のような変化が起きます。
- Slackのメンションが変わる:「@法務 契約書見てください」から 「@〇〇さん、ちょっと壁打ち付き合って」 に変わる。
- 席順が変わる:経営会議で、末席の書記係から、社長の隣(参謀席) に座るようになる。
- 評価が変わる:「ミスをしなかった(減点ゼロ)」ではなく、「あの契約をまとめた(加点)」 で評価されるようになる。
結論:法務は「孤独な王様」の唯一の理解者であれ
社長は孤独です。社員には言えない不安(資金繰り、訴訟リスク、個人の連帯保証)を抱えています。
そんな時、感情論ではなく**「法律という客観的な物差し」で冷静に現状を分析し、「最悪でもこうすれば死にません」**と言い切ってくれる法務の存在は、何物にも代えがたい精神安定剤となります。
そこまで到達して初めて、ベンチャー法務は「面白い」のです。
まとめ:あなたは「ナビゲーター」になれるか?
ベンチャー企業の法務は、助手席に座る「ラリーのナビゲーター」に似ています。 運転手(社長)は、猛スピードで荒野を走っています。 前方の見えないカーブ(法的リスク)を予測し、「ここは減速(ブレーキ)!」「抜けたから全開(アクセル)!」と的確に指示を出す。
そんなスリリングでやりがいのある仕事に、挑戦してみませんか? 「ただの事務屋」で終わりたくないあなたを、ベンチャー企業は待っています。


