法務は「No」と言う部署ではない。ベンチャー社長が求める、最強のパートナーとしての「アクセルとブレーキ」

ベンチャー社長とスーツ姿の法務担当者が、アクセルとブレーキを備えた未来的な乗り物を共同で操縦し、右肩上がりの成長を示すグラフとビル群が並ぶ未来都市へ向かって進んでいるイラスト。二人が最強のパートナーとして協力している様子が描かれている。画像上部には大きな文字で「法務は「No」と言う部署ではない。」、下部には「ベンチャー社長が求める、最強のパートナーとしての「アクセルとブレーキ」」という記事タイトルが配置されている。 ベンチャー法務とは
弁護士町田北斗

ベンチャー起業の法務を専門とし、社内弁護士として企業の成長を法的側面から支えています。
当サイトでは、単なる事務処理ではない「経営に貢献できる法務」になるための実務ノウハウを公開。
契約書審査からIPO準備、労務戦略まで、現場で本当に役立つ「攻めと守りのリーガルビジネスマインド」をお伝えします。

弁護士町田北斗をフォローする

「それは法律的にリスクがあるので、できません」
もしあなたが、社長からの相談にこう答えているとしたら、ベンチャー企業では「使いづらい法務」の烙印を押されてしまうかもしれません。

大企業や中堅企業での法務は、確立されたブランドを守る「ブレーキ役」が主務でした。
しかし、成長フェーズにあるベンチャーや中小企業では、それだけでは会社は前に進めません。

経営者が求めているのは、**「死なない程度にリスクを取り、最速でゴールに向かうためのパートナー」**です。
法務担当者は、経営陣のビジョンをリスクの少ない形で実現することが使命です。

今回は、経営者から信頼される法務担当者が無意識に行っている「アクセル」と「ブレーキ」の高度な使い分けについて解説します。


1. 勘違いしていませんか?ベンチャー法務の「アクセル」とは

多くの人が「法務=守り(ブレーキ)」と考えがちですが、ベンチャーにおける法務の価値の半分以上は「攻め(アクセル)」にあります。

① 「ダメです」を「こうすればできます」に変換する

ベンチャーの新規事業は、法規制のグレーゾーンにあることが多々あります。
ここで「違法です」と思考停止するのではなく、「現行法に抵触しないスキーム(仕組み)」を構築することこそが、最大のアクセルです。

  • 悪い例:「業法違反になるので、この機能はリリースできません。」
  • 良い例:「今の仕様だと業法に触れますが、利用規約で主体をユーザー側に変更し、かつXXの許認可を取れば、来月には適法にリリース可能です。」

法務の役割は、リスクをゼロにすることではなく、**「リスクを許容可能なレベルまで下げて、ビジネスを通すこと(リーガル・エンジニアリング)」**です。


「違法」を「適法」に変えるスキーム構築力(リーガル・エンジニアリング)

ベンチャーの新規事業は、既存の法律が想定していない「隙間」を突くものが少なくありません。

ここで条文通りのNGを出すのは誰でもできます。プロの法務は、**「商流(お金と契約の流れ)」や「利用規約の定義」**を少しずらすことで、黒を白に変えます。

事業モデル・相談内容① 思考停止の「ダメです」(事業を殺す法務)② 提案型の「こうすればできます」(事業を加速させる法務)使ったロジック・法的テクニック(リーガル・スキーム)
C2Cマッチング
(家事代行や家庭教師のマッチングサイトを作りたい)
「職業安定法や派遣法に触れるので無理です」
※会社が人を派遣すると、許認可がない限り違法派遣になります。
「当社は雇用せず、ユーザー同士の『直接契約』の場を提供するプラットフォームにしましょう」
※利用規約で、当社はあくまで「場所貸し」であり、契約当事者にならないことを明記します。
【当事者の変更】
「雇用関係」を回避し、「業務委託の仲介」または「情報の掲載」という位置付けにスライドさせ、法規制をクリアします。
ヘルスケアアプリ
(チャットで医師が症状を聞いてアドバイスしたい)
「医師法(無診察治療の禁止)違反になるので無理です」
※対面なしでの診断は、原則としてリスクが高いです。
「『診断』ではなく『医療相談(アドバイス)』という建付けにしましょう」
※「病名の特定」や「薬の処方」はせず、あくまで一般的な医学情報の提供に留める仕様に変更します。
【定義の再構築】
医療行為(診断)と、非医療行為(相談)の境界線をガイドラインに基づき設定し、アプリのUIにも「診断ではありません」と免責を表示させます。
送金・決済機能
(ユーザー間で投げ銭や割り勘をさせたい)
「資金決済法(資金移動業)の免許がないので無理です」
※預かり金の移動は、銀行か登録業者しかできません。
「現金ではなく『ポイント』を発行し、出金不可・6ヶ月期限付きにしましょう」
※または、収納代行スキーム(債権譲渡)を使って、法的に「送金」に当たらない形を組みます。
【商流の変更】
「現金」を動かすと重い規制がかかりますが、「ポイント」や「前払式支払手段」に切り替えることで、登録のハードルを劇的に下げます。
スクレイピング
(他社サイトの情報を集めて分析・提供したい)
「著作権法違反や規約違反になるので辞めましょう」
※他人のデータを勝手に使うのはリスクがあります。
「『情報解析用』としての利用なら、著作権法で認められています(47条の5)」
※ただし、相手サーバーに負荷をかけないクロール頻度に制限し、元データをそのまま表示しない仕様にします。
【例外規定の活用】
「原則NG」の法律の中に隠れている「例外OK(情報解析など)」の条文を見つけ出し、その要件に合致するようにシステム仕様を調整します。

法務担当者のマインドセット:「法の支配」ではなく「法の活用」

この変換を行うために必要なのは、六法全書の知識ではなく、**「ビジネスモデルの解像度」**です。

  • 「なぜこの事業をやりたいのか?」
  • 「ユーザーにとっての価値は何か?」

これらを理解していれば、「診断ができなくても、相談ができるだけでユーザーは安心するのではないか?」といった代替案(ピボット)が提案できます。

**「法規制という壁に、ドアを描く」**のが、ベンチャー法務の真髄です。

② 契約書を「営業ツール」に変える

契約書を単なる「リスクヘッジの書類」と捉えていませんか?
優れた法務は、契約書を**「自社の利益を最大化し、かつ相手も納得させる武器」**として設計します。
知財の帰属や支払条件など、ビジネスの勝敗を決めるポイントを有利に運ぶ交渉力は、強力なアクセルとなります。

契約書は、締結した瞬間がゴールではありません。締結した後、ビジネスがどれだけスムーズに、かつ高収益に回るかを決定づける「設計図」です。


「守り」の書類を「攻め」の武器へ。契約書の戦略的転換

法務がビジネスセンスを発揮すると、契約書は「面倒な手続き」から**「キャッシュフロー改善ツール」や「資産形成ツール」**へと進化します。

契約条項・テーマ① 普通の契約書(ただのリスクヘッジ・受動的)② 営業ツールとしての契約書(利益最大化・能動的)ビジネスへのインパクト(なぜそれが武器になるか)
知的財産権
(成果物の帰属)
「納品物の著作権は、すべて顧客に譲渡する」
※言われるがままに権利を渡し、自社には何も残らない(ただの下請け)。
「汎用的なプログラム(エンジン部分)の権利は自社に留保し、顧客には『使用権』を許諾する」
※顧客専用のデザインなどは渡すが、コア技術は渡さない。
【スケーラビリティの確保】
コア技術を自社に残すことで、他社案件でも同じコードを使い回せるようになり、開発原価が劇的に下がります(SaaS化への布石)。
支払条件
(キャッシュフロー)
「月末締め翌月末払い(後払い)」
※商慣習通りにするだけ。資金繰りが苦しくなる。
「年間契約の一括払いなら、総額から5%ディスカウント」
※契約書のオプションとして「松(一括)」と「竹(月額)」を用意する。
【資金調達コストの削減】
借入をするよりも、値引きで現金を先取りした方が、キャッシュフロー(CF)は良くなります。契約書で「お得感」を出しつつCFを改善します。
データ利用権
(AI・分析)
「契約終了後、データはすべて速やかに廃棄する」
※秘密保持を重視するあまり、データという資産を捨てる。
「顧客データは、個人を特定できない統計データに加工した上で、サービスの品質向上(AI学習)に利用できる」
※データの「二次利用権」を確保する。
【プロダクトの進化】
顧客が増えるほどAIが賢くなり、競合他社が追いつけない「データ優位性(Data Moat)」が構築されます。
仕様変更
(追加開発)
「仕様変更は別途協議する」
※曖昧にしておき、後で「これもやって」と言われた時に断れず、タダ働きが発生する。
「当初仕様以外の作業は、一律『人月単価〇万円』で精算する」
※追加オーダーの「単価表」を最初から契約書に埋め込んでおく。
【アップセルの自動化】
「追加はお金がかかります」といちいち交渉しなくても、契約書を見せるだけで自動的に追加売上が確定します。

「相手も納得させる」ロジックの組み立て方

重要なのは、一方的に有利な条件を押し付けるのではなく、**「相手にとってもメリットがある」**ように見せることです。

  • 知財を渡さない理由:
    ×「当社の権利だからです」
    ◎「コア技術を当社が保有し続けることで、メンテナンスやアップデートを安価かつ迅速に提供し続けられます。権利を譲渡すると、逆に御社の保守コストが跳ね上がりますが、よろしいですか?」
  • データを貰う理由:
    × 「当社のAIを賢くしたいからです」
    ◎ 「統計データを使わせていただくことで、御社に対してもより精度の高い分析レポートや、他社ベンチマーク機能を提供できるようになります」

法務担当者は、営業マンに対し、この**「契約交渉トークスクリプト」**までセットで渡すことで、最強の営業支援を行うことができます。


2. 本当に踏むべき「ブレーキ」の見極め方

もちろん、アクセル全開で崖から落ちては意味がありません。しかし、ベンチャーにおけるブレーキは「急停止」ではなく、「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」のように、動きながら制御するものであるべきです。

ブレーキその① 「100点のリスク管理」を捨てる勇気

大企業では「リスクゼロ」を目指しますが、ベンチャーでそれをやるとスピードが死にます。

  • 取るべきリスク(ビジネスリスク): 損害賠償の上限額、軽微なコンプライアンス不備など、「最悪お金で解決できる、あるいは修正可能なもの」。
  • 絶対に踏むべきブレーキ(フェイタルリスク): 許認可の取り消し、刑事罰、回復不能なレピュテーションリスク(炎上)、倒産に直結する条項。

この**「致命傷」だけは断固として防ぎ、それ以外の「擦り傷」は許容する**という線引きの感覚が重要です。

スタートアップにおいて、全てのリスクを塞ごうとすることは、**「何もしないこと(死)」**と同義です。法務の役割は、アクセルを全開にするために、本当に危険な崖だけをガードレールで塞ぐことです。


「カスり傷」は恐れるな。「即死」だけを回避せよ

法務担当者が経営陣と確認するのは、**「どこまでなら怪我をしていいか(リスク許容度)」**のコンセンサスを得ることです。

「最悪、お金で解決できるか?」「謝れば許してもらえるか?」という基準で選別します。

リスクのカテゴリ① 取るべきリスク(Business Risk)【判断:GO / お金で解決可能】② 絶対に踏むべきブレーキ(Fatal Risk)【判断:STOP / 即死・倒産】境界線の見極め方(法務の判断基準)
契約・損害賠償
(対 顧客・取引先)
「賠償額の上限がない」
※ただし、過去の実績から見て損害発生確率が極めて低く、かつ会社の現預金で払える範囲(数百万〜数千万円)と予測される場合。
「自社の存続を揺るがす無制限賠償」
※ユーザー数×数万円のような、計算すると数十億円になり得る条項。または「連帯保証人(社長個人)」を求められる契約。
【B/S(貸借対照表)への影響】
その損害が現実になった時、会社が破産するか、それとも「痛い出費」で済むか。
法規制・コンプライアンス
(対 行政・警察)
「グレーゾーンへの進出」
※業法(医師法、旅行業法など)の適用が曖昧だが、事前に省庁へ照会(ノーアクションレター)を行うか、ビジネスモデルを修正すれば回避可能なレベル。
「刑事罰・許認可取消」
※経営者が逮捕される(詐欺、横領、出資法違反)、または事業に必要な免許(金商法など)が一発で取り消される行為。
【リカバリーの可能性】
「指導・改善命令」で済むなら攻める。「営業停止・逮捕」なら絶対に止める。
知的財産・権利
(対 競合・第三者)
「他社の商標と少し似ている」
※最悪、警告を受けたらサービス名を変更(リブランディング)すれば事業継続が可能。
「コア技術の権利侵害・流出」
※自社のメインプロダクトが他社の特許を完全に踏んでいる(差止請求でサービス停止)、または自社のソースコード権利を開発会社に取られている。
【代替手段の有無】
名前やデザインは変えられるが、技術の根幹や事業の土台を失えばゲームオーバー。
レピュテーション
(対 世間・SNS)
「一部ユーザーからのクレーム」
※UI変更や値上げに対する批判など、コアファン以外からのノイズ。誠実に対応すれば鎮火可能。
「社会的信用の完全失墜」
※個人情報の大量漏洩(隠蔽)、反社会的勢力との関わり、ハラスメントの常態化など、ブランドが再起不能になる大炎上。
【信頼の回復不能】
「失敗した会社」は許されるが、「嘘をついた会社」「悪意のある会社」は市場から抹殺されます。

法務の心得:「トリアージ(優先順位付け)」

病院の救急救命室と同じです。

全ての患者(契約書の修正点)を助ける時間はありません。

  1. 黒タグ(即死): 倒産、逮捕、事業停止。 ⇒ 全力で回避。
  2. 赤タグ(重症): 数千万円の損失、主要顧客の喪失。 ⇒ リスク低減案を出して交渉する。
  3. 黄・緑タグ(軽症): 数十万円のリスク、軽微な規約違反。 ⇒ 「リスクあり」と伝えた上で、経営判断で通す(目をつぶる)。

ベンチャー法務において、「100点満点の契約書」を目指すことは、「チャンス損失」という最大のリスクを犯していると自覚すべきです。

ブレーキその② 社長の「熱」を冷まさずに、諭す技術

イケイケドンドンの社長に冷や水を浴びせるのは逆効果です。 「社長のやりたいことは素晴らしいです(共感)。ただ、今のままだと社長が逮捕されてしまうリスクがあります(事実)。だから、この部分だけ修正させてください(提案)」 このように、**「あなたのビジョンを実現するために、私がリスクを取り除く」**というスタンスでブレーキを踏むことが信頼に繋がります。

経営者は「できない理由」を知りたいのではありません。**「どうやったら実現できるか」を知りたいのです。法務は「No」と言う仕事ではなく、「はい、ただしこの方法で」**と言う仕事です。


「No」と言わない法務。社長のメンツを潰さずリスクを潰す会話術

法務にとって最大の敵は、社長に「あいつに相談するとまた止められるから、内緒で進めよう」と思われることです。

相談のドアを開け続けてもらうためには、**「ビジョンへの共感(YES)」から入り、「致命傷の回避(BUT)」を伝え、「抜け道(IF)」**を提示するサンドイッチ話法が必須です。

場面・社長の暴走① ダメな法務の「正論パンチ」(社長のやる気を削ぐ・相談されなくなる)② 信頼される法務の「Yes, But提案」(ビジョンを守り、リスクを消す)提案のロジック(心理的アプローチ)
広告・PR
「世界初!No.1!って大々的に出そうぜ!」
(根拠が薄い誇大広告)
「景表法違反になるのでダメです。根拠データがないと嘘になります」
※「嘘つき」と言われたようで社長は不機嫌に。「細かいこと言うなよ」と反発される。
「インパクト最高ですね(共感)。ただ、他社から刺されて広告停止になるともったいないです(リスク)。『○○調べ』と注釈を入れるか、範囲を『国内』に限定すれば、即リリース可能です(提案)」【表現のチューニング】
「言うな」ではなく「言い方をこう変えれば言える」と修正案を出し、広告効果を維持させます。
新規事業
「この機能、ライバルより先に明日リリースだ!」
(利用規約や許認可が未整備)
「規約もできてないし、業法違反のリスクがあるので承認できません」
※スピード感のない抵抗勢力とみなされ、「お前は評論家か」と怒られる。
「この機能は市場を変えますね(共感)。ただ、今のままだと最悪サービス停止命令が出ます(リスク)。まずは『β版』として人数限定でリリースし、その間に許認可をクリアするのはどうですか?(提案)」【段階的リリースの提案】
「止める」のではなく「走りながら整備する」プランを提示し、スピードと安全性を両立させます。
労務管理
「今月は勝負だ!全員不眠不休でやれ!」
(36協定無視の長時間労働)
「労基法違反です。ブラック企業になりますよ。残業代も払えません」
※「俺たちの情熱を法律で測るな」と精神論で返される。
「チームの士気が高いのは素晴らしいです(共感)。ただ、倒れて労基署に入られるとプロジェクト自体が止まります(リスク)。深夜残業は禁止にして、代わりに『早朝手当』と『達成ボーナス』を出して効率を上げませんか?(提案)」【インセンティブへの変換】
「働かせるな」ではなく「効率よく働かせる」方向に誘導し、結果としてコンプライアンスを守ります。
契約交渉
「大手との契約だ!条件なんていいからハンコ押せ!」
(不利な条件での契約締結)
「損害賠償が無制限になっているので、修正しないと危険です」
※「お前がビビってるせいで破談になったらどうするんだ」と詰められる。
「この大手と組めるのはデカイですね(共感)。ただ、向こうのミスでも社長が借金を背負う条項になっています(リスク)。『賠償額の上限』だけ設定できれば、あとは社長の判断でGOして大丈夫です(提案)」【一点突破の交渉】
10個の修正点を出すのではなく、「ここだけ直せば死なない」という一点に絞って提案し、社長の負担を減らします。

法務のキラーフレーズ:「社長を守るために」

この「諭す技術」の根底にあるのは、**「私はあなたの敵(ブレーキ)ではなく、あなたのガードマン(盾)だ」**というメッセージです。

最後に、どうしても社長がリスクを無視して突き進もうとした時の**「最後の殺し文句」**を紹介します。

「社長、分かりました。社長がそこまで言うなら、私は止めません。

ですが、もし何かあった時、会社を守れないのが一番怖いんです。

だから、この『免責条項』一本だけは、入れさせてください」

ここまで言われて、「それでもいいから突っ込め」と言う経営者は稀です。

「愛あるブレーキ」こそが、ベンチャー法務の真骨頂です。


3. 「管理部門」から「経営パートナー」への進化

アクセルとブレーキを適切に使い分けることができれば、あなたは単なる「法務担当者」から、社長にとってなくてはならない「右腕(パートナー)」へと進化します。

孤独な経営者にとって、**「法律という客観的な物差しを持ちながら、ビジネスの成功を本気で考えてくれる存在」**は、何物にも代えがたい安心材料です。

  • 事業の相談が、企画段階から来るようになる。
  • 経営会議で「法務的にはどう思う?」と最初に意見を求められるようになる。
  • 会社の成長と自分の成長がリンクする実感を味わえる。

これこそが、ベンチャー法務の醍醐味です。

脱・事務屋。「代わりの利かない右腕」になるための進化論

法務担当者のキャリアには、明確な「壁」があります。

一つは**「法律知識の壁」。もう一つは「経営視点の壁」**です。

後者を乗り越えた時、あなたは「コストセンター(管理部門)」から、利益を生み出す「プロフィットセンター(経営参謀)」へと変貌します。

業務・シーン① 従来の「管理部門」法務(ブレーキ役・事後処理)② 進化した「経営パートナー」法務(アクセル役・事前設計)経営者からの評価・信頼度(なぜ重宝されるのか)
相談が来るタイミング
(関与の深さ)
「決まったから、契約書チェックして」
※企画が固まり、後戻りできない最終段階で初めて知らされる(聖域なきチェックができない)。
「今度こういうことやりたいんだけど、どう思う?」
※ホワイトボードにアイデアを書く「企画の初日」に呼ばれ、法的スキームそのものを一緒に設計する。
【手戻りの撲滅】
「最後に法務にひっくり返される」というストレスがなくなり、最短ルートでリリースまで走れるようになります。
会議での発言
(バリューの出し方)
「法的には問題ありません(沈黙)」
※コンプライアンス違反がないかだけを監視し、ビジネスの中身には口を出さない。
「法的にはクリアですが、その条件だと将来のM&Aで足枷になります。ここは権利を確保しておきましょう」
※法律を武器に、ビジネスの「将来価値」を上げる提案をする。
【視野の広さ】
目の前の契約だけでなく、数年後のExit(上場・売却)まで見据えたリスク管理ができる存在として頼られます。
トラブル対応
(危機管理)
「規則違反なので、現場の責任です」
※正論で現場を断罪し、自分(会社)の責任回避を優先する。
「現場の火消しは私に任せてください。社長は銀行への説明をお願いします」
※泥をかぶる覚悟を示し、社長が「前を向くための時間」を稼ぐ。
【心理的安全性】
「背中は任せた」と言える存在がいることで、経営者は安心してアクセルを全開に踏めます。
情報のインプット
(学習の対象)
「最新の法令・判例チェック」
※法務知識のアップデートに終始し、自社の業界動向には疎い。
「自社の業界動向・競合の決算書」
※「競合A社が特許を出願したから、うちはこの領域を攻めよう」と、ビジネスと知財をリンクさせて考える。
【共通言語での会話】
「法律用語」ではなく「ビジネス用語(数字・市場)」で会話ができるため、経営判断のスピードが落ちません。

「パートナー」に昇格した証(サイン)

あなたがこの領域に達した時、社内では以下のような変化が起きます。

  1. Slackのメンションが変わる:「@法務 契約書見てください」から 「@〇〇さん、ちょっと壁打ち付き合って」 に変わる。
  2. 席順が変わる:経営会議で、末席の書記係から、社長の隣(参謀席) に座るようになる。
  3. 評価が変わる:「ミスをしなかった(減点ゼロ)」ではなく、「あの契約をまとめた(加点)」 で評価されるようになる。

結論:法務は「孤独な王様」の唯一の理解者であれ

社長は孤独です。社員には言えない不安(資金繰り、訴訟リスク、個人の連帯保証)を抱えています。

そんな時、感情論ではなく**「法律という客観的な物差し」で冷静に現状を分析し、「最悪でもこうすれば死にません」**と言い切ってくれる法務の存在は、何物にも代えがたい精神安定剤となります。

そこまで到達して初めて、ベンチャー法務は「面白い」のです。


まとめ:あなたは「ナビゲーター」になれるか?

ベンチャー企業の法務は、助手席に座る「ラリーのナビゲーター」に似ています。 運転手(社長)は、猛スピードで荒野を走っています。 前方の見えないカーブ(法的リスク)を予測し、「ここは減速(ブレーキ)!」「抜けたから全開(アクセル)!」と的確に指示を出す。

そんなスリリングでやりがいのある仕事に、挑戦してみませんか? 「ただの事務屋」で終わりたくないあなたを、ベンチャー企業は待っています。

タイトルとURLをコピーしました