【法務2〜3年目のキャリア戦略】「何でも屋」から脱却し、市場価値を高める3つのステップ

生成された画像の代替テキストは以下の通りです。 ``` 法務3〜5年目のプロフェッショナルが、「何でも屋」から脱却し、市場価値を高めるための3段階のキャリア戦略を示すインフォグラフィック。「BEFORE」の業務に追われる多忙な現状から、「強みの棚卸しとフォーカス」「専門性の深化と発信」「ビジネスへの貢献と評価」という3つのステップを経て、「AFTER」の高い専門性と評価を持つ人材へと成長する過程が、階段を上るイラストで視覚的に表現されている。 ` スキルアップGUIDE
弁護士町田北斗

ベンチャー起業の法務を専門とし、社内弁護士として企業の成長を法的側面から支えています。
当サイトでは、単なる事務処理ではない「経営に貢献できる法務」になるための実務ノウハウを公開。
契約書審査からIPO準備、労務戦略まで、現場で本当に役立つ「攻めと守りのリーガルビジネスマインド」をお伝えします。

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法務としてのキャリアも1年を過ぎると、一通りの定型業務はスムーズにこなせるようになります。 しかし、ここで注意が必要なのは**「慣れによる停滞」**です。

法務2〜3年目は、ジェネラリストとしての基礎の上に、**「あなたならではの強み」**を掛け合わせる時期。転職市場でも、単に年数を重ねただけの人材と、明確な得意分野を持つ人材とで、評価が大きく分かれ始めます。

今回は、中級者が意識すべき「専門性」と「応用力」の磨き方について解説します。


1. 社内で一番の「武器」を作る

何でもそつなくこなす法務は重宝されますが、それだけでは市場価値は跳ね上がりません。
「法務全般わかります」に加え、**「特に〇〇分野なら誰にも負けません」**という武器(得意分野)を一つ作りましょう。

具体的な注力分野の例

  • IT法務・AI関連: テクノロジーの進化に伴う新しい法的論点。
  • 個人情報保護法・GDPR: グローバル展開やデータビジネスに不可欠。
  • 英文契約: クロスボーダー案件への対応力。
  • 知財管理: ブランド戦略や特許戦略への食い込み。

目標は、その分野に関して**「社内で一番詳しい人」**になること。
専門書籍を読み漁り、外部の有料セミナーにも積極的に参加して、社内の誰よりも最新情報と実務知識を持っている状態を目指してください。
「〇〇の件なら、あの人に聞けば間違いない」という信頼が、あなたのキャリアの軸になります。

【対比表】「ただの法務」vs「武器を持った法務」の市場価値

注力分野(武器)× 平均的な法務(広く浅く・その他大勢)◎ 武器を持った法務(社内第一人者・希少人材)キャリアへのインパクト
① IT法務・AI関連
(Web3・生成AIなど)
「利用規約のひな形を、自社向けに少し修正して作れます」
→ ネットの情報をツギハギするレベル。
「生成AIを利用する際の著作権侵害リスクを整理し、エンジニア向けのガイドラインを策定できます」
→ 最新技術と法律の交差点を理解し、**「攻めのルール」を作れる。
【テック企業への転職】
メガベンチャーや先端スタートアップから、高年収でのオファーが来やすくなる。
② 個人情報・GDPR
(データプライバシー)
「個人情報保護法の条文は一通り知っています」
→ 法律の知識があるだけ。
「GDPR(欧州)やCCPA(カリフォルニア)に対応した、越境データ移転のスキーム(SCC締結など)を構築できます」
→ グローバル展開の必須要件を満たせる実務能力がある。
【グローバル企業・DPO】
データ保護責任者(DPO)候補として、海外展開を目指す企業から重宝される。
③ 英文契約
(クロスボーダー)
「翻訳ツールを使いながら、なんとなく意味は分かります」
→ 修正や交渉はできない。
「英米法(コモンロー)の概念を理解し、Indemnity(補償)等の条項を相手方と直接英語で交渉できます」
→ 海外企業との提携を単独で完結させられる。
【外資系・商社】
英語ができる法務人材は依然として不足しており、年収1000万円超えの基本条件となることが多い。
④ 知財戦略
(IPランドスケープ)
「弁理士の先生に特許出願の依頼を出しています」
→ 事務的な取り次ぎ役。
「競合他社の特許網を分析し、『自社が参入可能な空白地帯』を開発部に提案できます」
→ 法務でありながら事業戦略の中枢**に関与する。
【メーカー・IPベンチャー】
技術力の高いディープテック企業において、CTO(最高技術責任者)の右腕になれる。

解説:目標は「社内の第一人者」

いきなり「日本一」を目指す必要はありません。まずは**「この分野のことなら、社内で一番詳しい(顧問弁護士よりも詳しい)」**という状態を目指してください。

  • 「AIのことは〇〇さんに聞けば分かる」
  • 「英語の契約書なら〇〇さんだ」

この「タグ」が社内で認知されると、その分野の仕事が集まるようになり、経験値が加速度的に増えていきます。その実績こそが、次のキャリアへの最強のパスポートになります。


2. 「答えのない問い」に自分なりの解を出す

定型業務の次は、非定型業務への挑戦です。
マニュアルや過去のひな形が通用しない案件こそ、法務としての真価が問われます。

  • 前例のない新規事業のスキーム検討
  • 複雑に利害が絡み合うトラブル対応
  • グレーゾーンの法解釈が必要な事案

これらには、唯一の正解はありません。
必要なのは、企業文化や会社のビジョンと照合し、**「リスクはここにあるが、このように構成すればビジネスを実現できる」**という、自分なりの見解(法務意見)を導き出す力です。

「ダメです」と止めるのは簡単です。
ビジネスを止めずにリスクを制御する、**「解決策の提示」**ができるようトレーニングを積みましょう。

【対比表】「止めるだけの法務」vs「道を作る法務」の思考プロセス

シチュエーション× 思考停止する法務(ゼロリスク志向・評論家)◎ 解を導き出す法務(リスクテイク・建築家)アプローチの違い
前例のない
新規事業
(Web3 / シェアリングエコノミーなど)
「過去に判例がなく、類似のビジネスモデルも見当たりません。リスクが測定できないため、推奨できません
→ 未知のものを「危険」と判断して止める。
「直接の判例はありませんが、類似する『金融商品取引法』の規制趣旨(投資者保護)から類推すると、『分別管理』さえ徹底すれば適法の可能性が高いです
→ 既存の法理からロジックを組み立てる。
【類推適用と論理構築】
ドンピシャの正解がなくても、周辺領域の法律の「趣旨(なぜダメなのか)」を分析し、安全地帯を定義する。
グレーゾーンの
法解釈
(行政の解釈が定まっていない領域)
「行政(監督官庁)のガイドラインが出るまで待ちましょう。今動くとグレーなので危険です
→ 他人が決めたルールに従うだけ。
「行政の見解は未定ですが、『ノーアクションレター制度』を利用して適法性を確認しましょう。または、利用規約で〇〇を制限することで、実質的に白に近づけます
→ 自ら働きかけてルールを確定させる。
【能動的なリスクコントロール】
ただ待つのではなく、行政への照会や、ビジネスモデルの微修正によって「白」に寄せる努力をする。
複雑な
トラブル対応
(感情的なクレーム・炎上案件)
「法律上、当社に賠償義務はありません。『支払わない』と回答して終わりです
→ 法的な勝ち負け(0か100か)しか見ていない。
「裁判なら勝てますが、SNSで拡散されるとブランド毀損額は数千万円になります。あえて『解決金』として10万円払い、早期に幕引きを図るのが経済合理的です
→ 経営的な「損得」で判断する。
【総合的な解決策】
「法的に勝つこと」が「ビジネスの勝利」とは限らない。レピュテーション(評判)リスクも含めた最適解を出す。

解説:「ダメです」と言うのは誰でもできる

「法律上、疑義があります」「リスクがあります」と言って案件を止めるのは、実は一番簡単で、責任を取らなくて済む方法です。AIでも判定できます。

しかし、ベンチャー企業が求めているのは、「ダメな理由」の解説ではなく、「どうすればGOできるか」の発明です。

「A案は真っ黒ですが、B案ならグレー、そこにCという要素を足せばホワイトになります」

このように、複数の法解釈を組み合わせて**ビジネスを実現させるためのロジック(理屈)**を書ける人が、高単価な法務人材(またはCLO)として評価されます。


3. 「井の中の蛙」にならないための社外ネットワーク

一社に長くいると、どうしてもその会社の「社内ルール」や「独特の慣習」が、世の中の常識であるかのように錯覚してしまいます。 これを防ぐために、社外のネットワーク構築を意識してください。

  • 他社の法務担当者が集まる勉強会
  • 法務関連の交流会・コミュニティ

これらに参加し、**「他社ではどう運用しているのか」「他社の法務はどのような視点を持っているのか」**という生の情報に触れることが重要です。 自社の常識を客観視し、相対化できる視点は、将来マネジメント層になった際や、転職活動をする際に極めて大きな武器となります。

【対比表】「社内に引きこもる法務」vs「社外と繋がる法務」

参加する場・活動× 社内しか知らない状態(井の中の蛙)◎ 社外を知っている状態(大海を知る)得られる「気づき」とアクション
① 法務勉強会・
セミナー
(実務運用の比較)
「うちは契約書を全部紙で印刷してハンコを押している。大変だけど、これが『法務の仕事』だ
→ 非効率な慣習を疑わない。
「他社の法務と話したら、9割が電子契約を導入済みで、NDAの審査はAIに任せているらしい」
「うちは遅れている」と気づき、ツール導入の稟議書を書くきっかけになる。
【生産性の向上】
「よその会社はもっと楽に、賢くやっている」という事実を知ることが、業務改善の最大の動機になります。
② 業界交流会・
コミュニティ
(リスク判断の基準)
「この新規事業は法規制が曖昧だから、リスク回避で『NG』を出そう
→ 慎重すぎてビジネスを止める。
「交流会で同業他社の法務に聞いたら、**『うちは利用規約のこの条文を工夫して、適法にリリースしたよ』**と教えてくれた」
→ 「やり方次第でできる」と知り、社内に代替案を提案できる。
【突破力の獲得】
書籍には載っていない「各社の工夫(裏技的な運用)」は、オフラインのネットワークでしか手に入りません。
③ 転職エージェント・
キャリア相談
(市場価値の客観視)
「毎日終電まで働いて年収400万円だけど、法務なんて間接部門だし、こんなものだろう」
→ 自分の安売りに気づかない。
「エージェントに会ったら、**『IPO準備経験と英語力があるなら、市場相場は年収800万円です』**と言われた」
自分の正当な市場価値を知り、昇給交渉や転職に踏み出せる。
【キャリアの最適化】
社内の評価制度だけを見ていると搾取されがちです。定期的に「外の物差し」で自分を測ることが重要です。

解説:情報は「ギブ」から始まる

社外ネットワークで有益な情報を得るコツは、まず自分から情報を出す(Giveする)ことです。

「うちはこんな失敗をしました」「このツールを使ってみたらイマイチでした」といった**「失敗談」**は、他社の法務担当者にとって非常に価値があり、喜ばれます。

恥を捨てて失敗を共有することで、相手からも「実はうちもね…」と本音の(そして本当に役立つ)情報が返ってくるようになります。


まとめ:自ら仕事を「取りに行く」姿勢へ

  1. 特定の得意分野(武器)を確立する
  2. 答えのない課題に対し、リサーチと論理で解を出す
  3. 社外に出て、視点の「相場観」をアップデートする

2〜3年目は、与えられた仕事をこなすだけでなく、自ら専門性を深め、社内外に働きかけていくフェーズです。 この時期に培った「強み」と「人脈」は、必ずあなたのキャリアを支える財産となります。

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