法務は激務?それともホワイト?リモートワークの実態と法務担当者のリアルな1日を公開

弁護士町田北斗

ベンチャー起業の法務を専門とし、社内弁護士として企業の成長を法的側面から支えています。
当サイトでは、単なる事務処理ではない「経営に貢献できる法務」になるための実務ノウハウを公開。
契約書審査からIPO準備、労務戦略まで、現場で本当に役立つ「攻めと守りのリーガルビジネスマインド」をお伝えします。

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「企業法務に興味はあるけれど、法律事務所のように激務なのだろうか?」
「雑務に追われて、結局残業ばかりになるのでは?」

企業法務へのキャリアチェンジを考える際、多くの人が気にするのが**「働き方(ワークライフバランス)」**です。

結論から言うと、法務職はバックオフィスの中でもトップクラスに「リモートワーク」や「マイペースな働き方」がしやすい職種になりつつあります。
ただし、それは「選ぶ会社」によって天と地ほどの差があります。

今回は、法務担当者の「リモートワーク率」「残業の実態」、そして「リアルな1日のスケジュール」を紹介します。


1. 意外と高い?法務のリモートワーク普及率

これまで法務といえば、「紙の契約書」と「ハンコ」のために出社が必須というイメージがありました。しかし、ここ数年でその常識は覆されています。

なぜ法務はリモートしやすいのか?

理由は大きく3つあります。

  1. 電子契約の普及:クラウドサインやDocuSign等の導入により、押印のための出社が激減しました。
  2. 条文審査のデジタル化:契約書のレビューはWordやAIレビューツールで行うため、自宅のPCでもオフィスと変わらないパフォーマンスが出せます。
  3. チャット・ウェブ面談ツールの導入:新興企業はほぼすべての企業がチャット&ウェブ会議ツールを導入しており、よほどの事情がない限り、出社する必要がありません。

特にIT系ベンチャー企業や、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる中小企業では、週3〜4日のリモートワーク、あるいはフルリモートを導入しているケースも珍しくありません。

デジタル化が生んだ「新しい働き方」

理由具体的なツール例リモートワークが可能になる具体的背景
1. 電子契約の普及・クラウドサイン
・DocuSign
・Adobe Sign
「ハンコ出社」が不要に。
以前は「押印作業のためだけに満員電車で出社」という非効率がありましたが、現在は自宅からクリック一つで締結作業が完了します。製本や郵送の手間もなくなりました。
2. 条文審査のデジタル化・Word(変更履歴)
・LegalForce
・GVA assist
自宅のPC環境が最強の審査環境に。
紙に赤ペンを入れる作業から、デュアルモニターでのWord編集+AIレビューツールによるダブルチェックへ移行。むしろ自宅の方が集中でき、精度もスピードも上がります。
3. チャットツールの導入・Slack
・Chatwork
・Microsoft Teams
「ちょっといいですか?」の遮断。
営業担当からの突発的な相談もテキストベースになり、自分のタイミングで回答可能に。ログ(証跡)が残るため、「言った言わない」のトラブルも防げます。

2. 業務の締切・残業のリアル

「常に締切に追われているのではないか?」という不安についてですが、これは**「コントロール可能」**な部分が多いのが企業法務の特徴です。

中小企業との違い

ベンチャー企業と中小企業は、両者は規模感が似ていても、残業や締切の性質はやや異なります。

安定型の中小企業は、「ルーティン重視」。
既存取引の契約更新や、定型的な審査業務が中心です。
年間の業務量は予測しやすく、突発的な残業は少なめです。マイペースに働けますが、変化を好む人には少し物足りないかもしれません。

ベンチャー企業は、まさに「スピード戦」。
新規事業に伴い前例のない契約書をゼロから作る機会が多く、突発的な「明日までにお願い!」という依頼も頻発します。
ただし、AIを上手く活用することで、これまでとは圧倒的な効率でアウトプットできるので、突発的な業務も効率的にこなしていくことができます。

「変化を楽しむ」か「安定を愛する」か。自分の性格に合わせて選ぶことが、入社後のミスマッチを防ぐ鍵です。

法律事務所との違い

クライアントワークである法律事務所の場合、「明日の朝までに!」と言われれば断りづらいのが実情です。一方、企業法務(インハウス)の場合、依頼者は「社内の事業部」です。

  • 平時: 「この契約書は通常中2営業日で返します」といった社内ルール(SLA)を設けることで、自分のペースを守りやすくなります。
  • 繁忙期: 月末、四半期末、株主総会前などはどうしても忙しくなります。ただし、いずれも定期的に発生する業務のため、事前にスケジュール調整しやすいといえます。

**「基本的にマイペースに、淡々と業務をこなしていく」**というスタイルが、多くの法務担当者のリアルな働き方です。

特に現在の企業は、求職者からワークライフバランスが重要視することが強く求められています。人材不足という事情もあり、非常に働きやすい環境となりつつあります。


3. 【公開】法務担当者の1日スケジュール

では、実際にどのようなタイムスケジュールで動いているのでしょうか?

働き方のスタイルが異なる「2つのパターン」を紹介します。

パターンA:フルフレックス・ITベンチャー法務(30代・男性)

時間内容詳細
09:30始業・メールチェック自宅よりSlackやChatworkで各部署からの相談を確認。
10:00契約書レビュー最も集中できる午前中に、重ための英文契約書などをチェック。
12:00ランチ自宅で準備。たまに近所のジムへ行きリフレッシュ。
13:00事業部MTG(オンライン)新規事業のリーガルチェック会議。Zoomで参加。
15:00集中作業・リサーチ法改正の調査や、社内規程の改定作業など。
17:00法務チーム定例チーム内でのナレッジ共有や進捗確認。
18:30終業キリの良いところで退勤。通勤時間がないため即プライベートへ。

ポイント:

チャットツールでの即レスは求められますが、通勤時間がなく、集中する時間と会議の時間を分けやすいため、生産性は非常に高いです。

パターンB:安定重視・中堅メーカー法務(20代・女性)

時間内容詳細
08:45出社・メールチェック始業前にコーヒーを飲みながらタスク整理。
09:00朝会・押印・郵送物の対応業務部署での共有事項確認。一部残る紙契約書の製本・押印処理。官庁などの資料等は書面で届くので郵送物の処理。
10:00社内相談対応営業担当が直接デスクに相談に来ることも。対面で細かくヒアリング。
12:00ランチ社員食堂や同僚と外食でコミュニケーション。
13:00契約書作成・審査午後はひたすら契約書作成。NDA(秘密保持契約)等の定型的なもの中心。
16:00顧問弁護士との打合せ複雑な案件について、外部の先生と電話で協議。
17:45定時退社繁忙期以外はほぼ定時。アフター5は資格の勉強や習い事へ。

ポイント:

出社頻度は高めですが、その分「会社にいる間だけ働く」というオンオフの切り替えが明確です。残業も少なく、ワークライフバランスは安定しています。


4. ワークライフバランスが良い求人を見極めるコツ

法務として「働きやすい環境」を手に入れるためには、転職活動時に以下のポイントをチェックすることをおすすめします。

  1. リーガルテックの導入状況
    • AI契約書レビューや電子契約サービスを導入している会社は、業務効率化への投資を惜しまないため、無駄な残業が少ない傾向にあります。
  2. 事業フェーズ
    • IPO(上場)準備直前のベンチャーは、規定整備などで非常に忙しくなります。逆に、上場直後や安定成長期の中小企業は、比較的落ち着いて働ける傾向があります。
  3. 法務部門の人数
    • 「法務担当が自分1人(一人法務)」の場合、休む際に代わりがおらず、プレッシャーがかかりがちです。2〜3名以上の体制があるかどうかもチェックポイントです。
チェック項目狙い目(ホワイト・マイペース傾向)覚悟が必要(激務・プレッシャー傾向)見極めのポイント
① リーガルテック
導入状況
導入済み(AIレビュー・電子契約 等)
業務効率化への投資を惜しまない会社です。単純作業が自動化され、無駄な残業が少ない傾向にあります。
未導入・紙文化メイン
「契約書は紙で郵送」「管理はExcel手入力」など、アナログ作業による残業が発生しやすい環境です。
求人票の「使用ツール」欄や、面接での逆質問で確認可能です。
② 事業フェーズ上場直後 〜 安定成長期
管理体制が整っており、業務フローが確立されています。比較的落ち着いて働ける傾向があります。
IPO(上場)準備直前(N-2期など)
規程の整備や内部統制の構築など、期限付きの膨大なタスクが発生し、非常に忙しくなります。
「現在の上場準備ステージ」を確認しましょう。ただし、IPO経験を積みたい場合は後者が正解です。
③ 法務部門の
人数体制
2〜3名以上のチーム体制
業務の分担が可能で、有給休暇を取る際も引継ぎができるため、休みやすい環境です。
一人法務(担当が自分だけ)
全ての責任が自分にのしかかり、休む際の代わりがいません。プレッシャーは高めです。
「法務部門の構成人数」と「法務専任か兼任か」を必ずチェックしてください。

まとめ:法務は「自分の時間」を確保しやすい専門職

企業法務は、営業職のように数字に追われるストレスとは無縁で、かつ弁護士業のように24時間クライアント対応に追われることも少ない、非常にワークライフバランスを取りやすい職種です。

しかし、その実態は企業によって千差万別です。
「自分はリモート重視なのか」「収入重視なのか」を明確にした上で、企業選びを行うことが成功の鍵です。

自分に合った企業の内部事情を知りたい場合は、法務に特化した転職エージェントに「実際の残業時間」や「リモート率」を確認してもらうのが一番の近道です。

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